見てる。正面に座っているあの男
迪士尼美語 世界、やっぱりさっきから私の足を見てる・・・・
電車に揺られる京子は、正面の男の目の動きを気にしながらミニスカートの膝の上に買い物袋をソッと置いた。
いつも京子が利用している電車はいつも空いていた。だから痴漢に遭う恐れはなかった。しかし電車が空いている分、向かい側の席からの視線が気になる。特にいつもミニスカートを履いている京子は、向かいの席に男性が座るとミニスカートの中が見えているのではないかといつも心配になっていた。
正面に座るスーツ姿の男は明らかに京子の足をジロジロと見ていた。歳は40代であろうか、濃紺スーツの肩に白いフケをチラつかせながら、時折だらしない無精髭をジャリジャリと擦っては携帯電話を弄っている。京子が視線を変える度に男は携帯電話の画面にソッと目を戻すが、しかし、すぐにまた男の視線は携帯
迪士尼美語 世界から京子の足へと移動するのだった。
京子はこの男に見覚えがあった。先日、隣町のデパートへ買い物に行った帰りにも、電車でジロジロと足を見られては嫌な思いをしたのだが、あの時の男も確かにこの男だった。
時刻はまだ3時30分。この男はいつもこの時間にこの電車を利用しているようだが、しかし、こんな中途半端な時間に電車に乗っているサラリーマンは珍しい。出勤には遅すぎるし帰宅には早すぎる。それともこの男はセールスマンなのだろうか?でもそれにしては不潔すぎる・・・・などとあれこれ考えていた京子だったが、車窓から見慣れた駅の風景が見えると荷物を持って素早く立ち上がり出口へと向かった。
京子が男に近付くと、男の視線は京子の動きに合わせて動いた。男の視線を感じながら男の前を通り過ぎる瞬間、京子はチラッと男の顔に視線を向けた。男と目が合う。
男の赤く濁った充血したその目は、まるで覇気のない死人のような目だった。
(嫌な目・・・・)
慌てて視線を反らした京子は素早く男に背を向け、出入口に立つポールに手を添えながら電車が止まるのを待った。出入口の
寰宇家庭 すぐ横の座席にだらしなく座っていたその男からはプンプンと酒の匂いが漂って来た。
扉が開くなり急いで電車を飛び降りた京子は、だらしない中年男のいやらしい視線と昼間から漂わす酒の匂いに不快感を現しながら、急ぎ足で改札口へと向かったのだった。